澤の屋

外国人に選ばれる都内の和風旅館

「澤の屋」は、台東区谷中にある古い和風旅館です。

一見どうということのない古い建物のようなのですが、実はこの施設は外国人観光客から大人気の旅館として広く知られています。

「澤の屋」があるのは上野公園や東京国立博物館、東京都美術館など数多くの観光名所が集まる地域の中間地点であり、また下町らしい日本の伝統工芸品を扱うお店もたくさん見られています。

そうした地の利ももちろんあるのですが、何よりも建物そのものが持つ日本家屋らしい魅力と、オーナーであるご夫婦のおもてなしが長年にわたる人気の理由となっています。

ですがこの「澤の屋」は創業以来ずっと順風満帆で来たわけでなく、昭和50年代には宿泊客ゼロという日が続くなど営業の危機にもさらされたこともありました。

そこで積極的に外国人の受け入れをするように方向を転換したことで、新たに日本旅館の魅力を引き出しこれまでの知名度にまで高めることができたのです。

変わらないということが魅力

「澤の屋」の最大の魅力は「変わらないこと」であるといいます。

これまで宿泊をした外国人や遠方からの日本人観光客の意見で目立つのは、「以前と変わっていないことに安心して再び訪れた」ということです。

周辺の旅館がどんどん改築や増築をして近代的な設備にしていっている中でこの「澤の屋」だけが昭和20年代の創業時からほとんど基本的な部分を変えずに営業しているのです。

オーナーである澤氏も最初は周囲の旅館との競争のために増築などを考えたことがあるそうですが、お客さんから「以前と違う旅館になるならもう来ない」というふうに言われて方針を転換したといいます。

そのため今も「澤の屋」の室内で使用されている設備や建具は古い日本家屋そのままのものとなっており、床の間や障子、掛け軸などといった日本的な装飾品が外国人観光客向けに提供されているのです。

外国人観光客はむしろそういったものを嫌うのではないかと思いそうなところなのですが、実際にはそんな日本らしいギャップに大きな魅力を感じるらしく、最初は使いにくい設備に不満を持つことはあっても数日ですぐに馴染んで環境を楽しむようになってくれるんだといいます。

家族と近所の人とのふれあいも魅力

「澤の屋」が変わらないのは建物だけでなく、お客さんに対してのもてなしの精神もそうです。

旅館のある谷中は下町ということもあって近所の人たちは地域コミュニティを中心に生活しており、旅館を出るとそこにはたくさんの個人のお店が立ち並んでいます。

下町

必要なものを買いに出たときや、特に用事がなく散策をするときにはそんな個性的な街の風景を見たり、時にそこに暮らす人達と触れ合いを持つことができます。

日本的な旅館の魅力というのは、施設だけではなくそんな周辺の環境も大きな影響になるものなのかもしれませんね。